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このメッセージを見たのなら、きっと調べるはず。一番あやしいのは、会社の女だって。案の定、疑心暗鬼になっていた奥さんが決定的な証拠をつかんだのだ。
「どうしよ。嫁にバレた。」
「ごめんね。あたし、あなたがあの日、携帯忘れてるなんて知らなくて。」
あたしは知っていて、健気な女を演じ、泣いて見せた。
「いや、俺が悪いんだ。ロックもかけずに、携帯を放置していたから。」
「あたしたち、もうお別れなの?」
潤んだ瞳で彼を見上げると、彼はあたしを抱きしめた。
「そんな訳ないだろう?嫁には上手く誤魔化しておくから。」
そう言うと彼はあたしを押し倒した。
そんな時、あたしの部屋のチャイムが押された。あたしと彼は動きを止めた。彼は荒い息を吐きながら、裸でインターホンを確認した。
「嘘だろう?佳奈が来た!」
「えっ?奥さん。」
「ヤバイ。どうしよう。」
二人で息を殺していると、チャイムが連打された。
「あなた!居るんでしょ?出てきなさいよ!」
それでも息を殺していると、今度はドアがドンドンと叩かれた。
「女と一緒なんでしょ?早く開けなさいよ!開けろ!」
あたしは笑い出しそうになるのを堪えて、彼を見上げて泣き顔で懇願した。
「あたし、怖いよ。奥さんに帰ってもらって。」
そう言うと彼は慌てて下着と服を着てドアを開けた。
「おい、止めろよ。近所迷惑になるだろ?」
彼は観念してドアを開けた。
「女!どこに居るの?女と話をさせてよ!」
「そんなの居ないよ。ここは同僚の部屋だよ。」
「嘘!同僚って女でしょう?私、見たんだから。メッセージにユキって書いてあったのよ?」
「いやいや、その同僚男で由紀(よしのり)だから、俺が勝手にユキって呼んでるんだよ」
「へえ~、じゃあ同僚のよしのりがあなたの好きな料理作って待ってるわけ?」
「あ、あれはあいつがふざけて・・・」
あたしはそのタイミングで一糸まとわぬ姿で玄関に立った。
奥さんはあたしを驚愕の目で見ると、ようやく彼が気付いて振り向いた。
どう?あたしの体。あなたとは比べ物にならないくらい綺麗でしょ?
彼女の腹は膨れていた。妊娠6か月くらいだろう。彼女の顔は見る見るくしゃくしゃになって、涙が次から次へと頬を伝って醜かった。
「まさかとは思っていたけど、本当に浮気してたなんて。最後まで、信じたかった。」
赤い傘の所為か、彼女の顔は真っ赤に染まっていた。泣きながら彼女は走り出した。
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