赤い傘の女

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あの女の泣き顔は最高だった。あたしは今でもあの時の優越感を思い出すと、喜びに打ち震える。  あの日はちょうど今頃と同じ梅雨時期で、雨が降っていた。あたしは、その頃、会社の上司と付き合ってて、上司は週末になると何かと仕事付けて奥さんに嘘をついてあたしの部屋に入り浸るようになっていた。  最初は、若手ホープでイケメン、しかも、最近結婚したばかりで愛妻家で有名な彼を何とか射止めようと彼に近づいたのだ。すると、いとも簡単に彼は、あたしに堕ちた。  やっぱり女は顔とスタイルよね。あたしは、自信に満ち溢れていた。一度だけ奥さんと彼が腕を組んで幸せそうに街を歩いていたのを見たのがきっかけだった。はっきり言って、普通の女だった。あたしのほうが、よほど綺麗。彼は何故、あんな地味な女と結婚したのだろう。そう思うと、あたしの悪い虫がうずいた。  あの女が泣きわめくところを見たい。  その日からあたしの彼への猛アタックが始まった。飲み会があれば、必ず彼の隣に座り、さりげないボディータッチから始まり、意味深なアイコンタクト、仕事で疲弊している彼にそっと小さなメモにお疲れ様でしたと書いてパソコンの下に忍ばせる。  自然と彼は、あたしを意識し始めて、頃合いを見計らって告白。そして、深い仲になった。 仕掛けはベタで、ポケットにピアスを忍ばせたり、わざと長い髪の毛を仕込んだり、わざと奥さんと一緒に過ごしているであろう時間に電話したり、メッセージを送ったりした。  そして、彼がたまたま家に携帯電話を忘れた時に、知っていてわざとメッセージを送ったのだ。 「今夜、うち来るでしょ?あなたの好きな料理作って待ってるから期待してて♡」 そのメッセージの後にわざと、自分の名前を入れた。たぶん、彼は名字だけで登録して会社の同僚を装っているだろうから。  
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