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ある梅雨の午後、朝から降っていた雨はやみ、水たまりに流れる雲が写りこむ。
その水たまりの景色は小学校から出てきた子供たちに壊されていく。
「まってー」
その小学校から走って先にいる二人組の友達に追いつこうとしている女児は、すず。6年生だ。
「ねえ、待ってってば」
その友達はすずの方に振り向かない。聞こえてないわけではない。だって、
「なんか、ついて来るんだけど、うざ」
という彼女たちのそんな声がすずには聞こえてくるから。
こんなことがすずにとっての日常なのだ。そんなの友達でもなく友達でいる必要はないけど、孤立するのが怖くて、自分に嘘をついて付き合っている。
「おい、女子歩くのおせーぞ」
不意にすずは体を勢いよく押された。よろけて水たまりの上にビシャンとお尻からついた。同じクラスの男子、タケオがゴメンと笑いながら走り去っていった。
「見て、あれお漏らししたみたい。汚い」
いつの間にか周りから距離がとられ、集団の中で独り浮いていた。
すずは雨に濡れショボくれた猫のように家路へとついた。
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