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家に帰る頃にはすずの目から涙が出ていた。必死にこらえようとするほどあふれてきて仕方なかった。
「ただいま」
「なにその顔」
すずの母はすずの泣き顔が大嫌いで、帰ってくるなりそう聞いてきた。
「ちょっと転んで」
「そう。着替えて。すぐ服洗うから」
すずは頷き子供部屋に向かった。入ると小 3の妹のれいがいた。
「今日は私の友達来るから、友達帰るまで部屋出てて。お姉ちゃんダサいし、見られたくないし」
「はいはい、わかったよ」
すずは着替えると宿題と洗濯物を持って部屋を出た。妹にダサいと言われることにすずは何も反感をもたない。むしろ同意だ。
洗濯物を洗面所に持っていって置くと、鏡に映る自分を見ないように手を洗った。
「妹はかわいいのに…」
すずは自分の醜い顔が嫌いで、かわいい妹が皆からちやほやされるのは当然だと思っていた。親だって妹のことばかり大事にしていて、のけ者が当たり前だった。
「けど…、アイツは嫌い!」
帰り道で一方的に傷つけてきた男子タケオのことだ。タケオがすずを傷つけるのは今に始まったことではなく、すずにとって我慢の限界だった。
気づくとすずは洗濯物と一緒に持ってきていた鉛筆を取り出しノートを開くと、“タケオシネ”と書いていた。が、すぐに善くないことだと思ったすずは消しゴムで消した。けど、洗面所に消しカスを残すのも、こんなことを書いた気持ち悪さを無くしたいのもあって、すずは洗面所の窓から消しカスを投げ捨てた。ちょうど風が吹いてきて、消しカスは風に乗って飛んでいった。
その夜、すずは変なものを見た。それが現実なのか夢なのかよくわからない。
すずが夢うつつのときに頬を触られ目を開けると、黒猫がいて
「今日は素晴らしき日です。おめでとうございます」
と、訳のわからないことを言った。
「すず様は覚醒致しました。喜びとともにお伝えしに参りました」
すずが何も言わずボーと見つめてると、黒猫は
「では、小生は忙しいのでこれにて」
としゃべって黒闇に消え、すずはそのまま眠りについたのだった。
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