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事件直後、深夜2時ごろに、チャールズはひとり駅のホームに眠っているのを作業員によって発見された。見慣れない若いホームレスのような男がいて、作業ができず困っていると署に届け出ると、保安官たちは容疑者の可能性を疑い、すぐさま現場へと駆けつけた。確保した男は混乱しうろたえるばかりで、すぐに薬物検査をされた上で、同時刻に現場を捜査していた保安官ハワード・ヤングに引き渡された。 ここから、彼の運命は狂ったかのように思われる。少なくともローレンスはそう思っていた。彼が犯人ではないという証拠もないが、犯行を裏付ける証拠もない。事件発生直後に、現場からそれほど離れていないホームで、ひとり暗闇の中に眠っていた、家のない知的障害の青年。ただそれだけである。いや、あったはずだ。 おそらくは、とうに終電が去ったことも知らず、彼は大好きな電車を見るためにそこにいた。やがて待ち疲れて眠ってしまい、叩き起こされて目覚めたらライトで照らされ、見知らぬ男たちに囲まれていたのだ。5歳の子供でなくとも混乱するに決まっている。 しかし捜査員たちにとっては、これまでそのホームを根城にはしていない新顔のホームレスであり、どこから来たのかわからぬ身元不明の謎の人物であり、自分の姓もまともに言えない狂った男としか映らぬのだ。そしてつい先ほど、近くで少女たちを襲った残酷な事件が起きたとなれば、彼が容疑者として挙げられるのは当然であった。 ローレンスが自宅で事件のニュースを見たときには、いつもの感情しか起こらなかった。ひと気のない現場近くで、あんな夜遅くに意味不明のことを話す若い男が逮捕されたとなれば、おそらくは犯人であろう。被害者には胸が痛むが、早期に解決すれば住人たちの不安も減る。流れ作業の品物を組み立てるのと、おそらくは同じくらいの薄い感情だ。だがもしも死刑が確定するとなると、ガス室のある刑務所は州内では自分の勤務先だけなので、自分にも関係してくるかもしれない。だがそれは何年先になるかわからない。裁判には長い年月を要するし、犯人はこの事件を忘れた頃に送致されてくるかもしれない。 だがそれからしばらくして、メディアは容疑者の思わぬ素性を報じるようになってきた。ローレンスにもそれまで抱いていた感情はなくなり、何か強烈なものが芽生えるようになっていた。妻のない独身の部屋に、たびたび酒を持って訪れる友人のアルとも、何度かこのことについて議論をした。
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