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だがそれを調べていた際はまだチャールズなどに面会できる余地もなく、何度か彼が移送された施設や裁判所にも匿名で手紙を送ったのだが、どういうわけかそれはメディアに漏れることすらなくどこかで揉み消されたようだった。 そして事件から半年後、隣接する州の森の中で、白骨化した身元不明の遺体が発見された。状態が状態なので、捜索人から照合し身元を探るのは難儀したようだが、所持品を公開したところある婦人から「息子かもしれない」との連絡を受けた。そして彼女が確認したところ、5月から行方不明となっていたマーク・バナマンであると判明したのだ。だが事件性の有無もあいまいであり、もともと定職にもつかず放浪癖のあった男ゆえか、警察も積極的な捜査はしなかったようで、小さなニュースのひとつとして終わった。だがその報道を偶然アパートで見ていたローレンスとアルは、重々しく顔を見合わせて黙りこくった。 身柄を拘束されているウェインにバナマンの殺害は不可能だ。だがふたりはそのトリックなどを考えているのではなかった。あの匿名の手紙がもしヤング保安官の目に入っていたのなら、彼が手を下した可能性が大いにある。マフィアのあいだを渡り歩いてきた男だ、手柄を立てるためにはどんな手段を用いてもおかしくはない。 それ以降、探偵のような行為はやめ、ふたりはただ地道に哀れなチャールズの潔白の証明と解放を願った。なぜこれほどに熱心であったかといえば、もしもこのまま刑が確定すれば、来年にはこの哀れな男が「自分のもと」へと移送されてくるからだ。ローレンスには耐えられなかった。彼がガス室送りになるのは、なんにもわからぬ5歳の子供を殺すのと同じようなものだ。本当に無実だとしたら…考えるだけで気が狂いそうだった。
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