1225人が本棚に入れています
本棚に追加
1「発端」
あえて文学的な表現で言おう。
声帯と名のついた肉ひだを振動させて発生する音を増幅し、いわく意味ありげな自己表現と存在表明をそれに籠め、まるで高い所から落とすがごとく臆面もなくそれを放ち、この世の隅々にまで送り出したい衝動というものは実際、誰しもがごく自然に抱く顕示欲求であるまいかと僕は考える。
そして僕にとってそれは文乃さんであり、文乃でもフミノさんでもなく、『文乃さん』なのだ。
……やはり簡潔に言おう。
僕は、何度でも。
何度でも何度でも何度でも。
文乃さんの名前を声に出して叫びたいと思うのだ。
最初のコメントを投稿しよう!