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幕間 小原鈴花の一日
「それじゃあ、今日の会議はここまで。解散。」
生徒会の会議が終わり、さっさと帰りの準備をする。
「お先に失礼します。」
「お疲れさまでした~生徒会長。」
挨拶をして教室を出る。そして迎えに来ていたリムジンに乗り込むと、鞄から教科書を取り出し、ぱらぱらとめくる。
「はぁ…」
思わず出かけたため息を押し殺して、また教科書に目をやった。
「お嬢様、到着しました。」
そんな無機質な声に従い、車から降りるとずらりと並んだメイドや執事に出迎えられた。
これもまた、見慣れた風景。それなのに、屋上での風景の方が安心するのは何故だろう…。
シャキシャキとした足取りで玄関へと向かう。
「ただいま戻りました…」
分厚い扉が開き、声がホールにこだまする。
すると、長い螺旋階段の奥から、一人の女性が降りてきた。
「母様…」
「おかえりなさい。鈴花さん。随分と遅かったのね」
声の持ち主は母。随分と白髪も増え、柿色の着物を着こなすその姿は貫禄が増したような気がする。
だがその美貌は今も昔も変わらないまま。
「すみません。母様。生徒会の会議がありまして…」
「そうだったのですか。まあいいわ。今からお茶のお稽古があるから、準備なさい」
「はい。母様」
メイドに連れられて、着替えさせられる。
紺色の着物に赤い帯。髪を結って教室に行く。
お茶が終われば花道、家庭教師の授業、料理の勉強、武道…etc.
目まぐるしいスケジュールをこなして…こうしてまた一日が終わる。
時計の針はもう一時を指していて…。
———— それでも私は可愛いお人形でいなければ。
そう、小原 鈴花は完璧な女の子なのだから。
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