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「……花野、急がなくていいよ。だから、こうやって週末に会える時に会いに来てくれるだけでいいから。
どれだけ傷つけたか、よく分かってる。
でも、ほんの少しでも、僕に対して気持ちがあったら、これからも会いたいんだ。
花野、それも駄目?」
懇願の響きもある言葉に、花野は迷った。
義隆に対する愛情は完全に消えたわけではない。拒否をするということは、彼に対しての想いが残っていたから。
自分を傷つける記憶から、心を守らないとならなかったからだ。
沈めていた気持ちを認めるべきなのだろうか……
花野は、自分の心に尋ねた後、静かに頷いた。
義隆は一瞬動かなかったが、すぐに花野を強く抱き締めてきた。掛けてきた声には涙の色が混じっていた。
「ありがとう……花野。本当にありがとう……感謝してる。もう一回花野に選んでもらえるように努力するよ。
……チャンスをくれてありがとう……」
何が一番の行動か、花野には分からない。
でも、今は、自分を必要としてくれる二人を見捨てるような行動は取れなかった。
花野は、義隆の願いを自分の意志で受け入れた。
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