第四章 心を解(ほど)く贈り物

2/76
5579人が本棚に入れています
本棚に追加
/552ページ
 かすみは休職すると、それほど()たずに男の子を出産した。  すぐに会いに行った花野(かの)は驚いた。  夫の直弥(なおや)にそっくりな子供だからだ。  目元だけ、(かす)かにかすみの面影はあるが、直弥の息子とすぐに分かる。息子を見るかすみはとても幸せそうだ。  妊娠の経緯(いきさつ)を思えば、かすみが喜ぶのは当たり前。花野も嬉しかった。  そのことを話すと、義隆も嬉しそうだった。  彼とかすみは大学の先輩後輩。学部も同じだったから、相当可愛がっていたようだ。その彼女が無事に出産したと知れば安心だろう。  「そっか、生まれたんだ。男の子か……事情は聞いてるから良かった。  石川(いしかわ)……かすみちゃんに似なかったんだ。彼女に似たら可愛らしくなりそうだけどね」  ここまで言って義隆は笑った。  「男の子が可愛かったら問題か。  花野も会いに行きたいんでしょ」  「うん。本家に住むから結構、窮屈そうだから」  婚家と友人は上手くいっていると聞いた。でも、格差は大きいし他人でもある。自分が行くことで、時々は息抜きをしてもらいたい。
/552ページ

最初のコメントを投稿しよう!