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寝室に戻ると、ベッドサイドテーブルの上にある皿に、外したピアスを置くのが習慣になった。
いつの間にか置かれていた。
ピアスを嫌っているのに、花野のために皿を用意する。義隆が花野へ譲歩しているのが分かった。
「花野……愛してる」
ベッドに入って半分眠ったような義隆から、愛情を伝える言葉が出た。寝言ではないようで、彼女の身体を軽く愛撫している。
「ありがとう」
彼の言葉に対して嬉しい気持ちはあるが、今は応えることができない。
まだ、花野から完全に警戒心は消えていない。
愛の言葉が返ってこないので、彼女の気持ちが揺れていると分かったようで、愛撫をやめて強く抱き締めてきた。
「もう、絶対裏切らないから」
誓うような言葉にも花野は頷けない。
彼は、裏切った後も花野を平然と抱いた。どれだけの衝撃だったか……
赦す気持ちはあっても、相手を信じるのがまだ怖かった。
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