第一章 巡り会いの不思議

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 花野(かの)は、企業説明会の会場で、数社からパンフレットをもらっていた。  彼女は大学の経済学部に在籍中だ。  優秀な彼女はゼミの教授にも期待されており、本人も、総合商社への入社を希望していた。  営業として、国内だけではなく海外でも活躍する。大きな夢だったが、花野には不可能とは思えなかった。  英語は堪能。勝気で自分の意見をはっきりと言う、日本人には珍しい性格。海外でも見劣りしないだろう身長。そして、長い髪の美人。  周りの注目を集めているが、本人はまったく無関心だ。  他人の目など気にもしない花野はブースを回り、有名商社の説明を聞いていた。  広大な会場で次の会社を探していた時、花野は、あるブースに目が()まった。  中村(なかむら)事務総合商事  漢字だけの固い社名と思った。  もっとも、花野が狙っている商社にしても、漢字の社名が基本だ。  でも、事務用品を扱う会社はアルファベットかカタカナが多いので、逆に新鮮に思えた。  目が留まった理由は簡単だ。大きめのポップに書いてある文章だった。
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