第一章 巡り会いの不思議

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 『女性が活躍できる会社』  確かに事務用品や文具は、女性の感性が役に立つ業界だと思う。  それでも、この文章が出ているということは、今までは違うということでもある。  男女機会均等といっても、それが建前なのは花野にしても分かっている。妊娠、出産という女性だけの事情がある。  日本はまだまだ女性の社会進出にとって不利な慣習も多い。  総合商社に入って海外勤務を望んでも、簡単には(かな)わない。  結婚したとすれば、男性なら単身赴任が可能だが、女性の場合、夫の協力は絶対に必要だ。  治安に不安定な国へ行って何かあれば、会社に非難が集まるのは当然なので、既婚未婚に関わらず、女性の赴任に対して慎重にもなるだろう。  でも花野は、普通に恋愛をして結婚もしたい。  男性だと不利にならないのに、女性だと、そこでキャリアが打ち止めという風潮がある。外資系を考えるのも、それが理由だ。  花野が興味を持ったと気づいた、その会社の社員が近づいてきた。  思わず花野は驚いてしまった。長身の彼女が見あげるほどに背が高い。  絶対に百八十センチは余裕で超えている。しかも、好感の持てるイケメン。  間違いなく客-女性の就活生-寄せだ。でも、単純だが効果的なのも事実。  「こんにちは。事務用品に興味は?」  容姿に似合った、穏やかな口調の優しげな声に、花野は少し赤くなった。雰囲気からエリートのようだ。容姿端正で優秀。  申し訳ないが、このクラスの会社にいるのがもったいないと思わせた。
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