第一章 巡り会いの不思議

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 「それほどは……あれを見て」  ポップを指さすと、男性は納得したように頷いた。  「簡単に説明するから入っていかない?」  素直に了承した。男性に好感を(いだ)いたので、もう少し話したい気持ちがあった。  そして文章の意味も聞いてみたい。  男性は、挨拶を交わした時の花野を見て、優秀な学生と思ったようで、女性の活躍について熱心に説明してきた。  「この会社、今まで総合職は男性のみだったんだ。女性は男性社員の補助って感じで採用してたから」  落胆する内容だが驚くほどではない。  外資系でも、決して女性が男性と同等というわけではない。特にアメリカ系の企業は男性優位だったりする。  それでも、日本企業に比べれば、女性が勤め続けられるのは間違いない。出産後のキャリア形成も国内企業よりも可能性が高い。  彼女は外資系の商社の内定をもらっている。女性の海外勤務が可能なようなので入社に傾いているが、国内の商社を見てからと思って、押さえの状態だ。  「そういう会社、珍しくないですからね」  本心を隠して当たり障りのない言葉を返した。  この会社を受けるかは分からない。でも、応募するなら非難めいたことは言えない。その程度の常識は持っている。  花野の言葉をどう解釈したかは分からないが、男性は苦笑した。
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