第一章 巡り会いの不思議

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 ***  「どうしたの、花野。教授に怒られたとか」  花野と同じゼミに所属する、友人の皆藤(かいどう)麻里(まり)が、冗談だと分かる口調で話しかけてきた。  「怒られてないけど、ちょっとね」  「……どうしたの。何かあったの?」  麻里には、中村事務総合商事に入社したいとは話していない。先に教授に報告しなければ駄目だと思っていた。  でも、教授の反対に花野は迷った。友人のアドバイスが欲しくなるほどに。  「相談乗ってくれる?教授に反対されたの、内定企業の件で。すごく迷ってる」  意外な言葉だったようで、麻里は驚きを顔に浮かべた。  「いいけど、珍しいね。花野が相談してくるなんて」  「そう?」  少し心外だった。麻里にはかなりいろいろ話しているつもりだ。花野の歴代の恋人も教えている。  「うん。ほんとにおっきなことって、自分で決めるじゃない。相談された記憶ない」  確かに彼女の言うとおりかもしれない。重要なことは自分で決断していた。  誰かに相談した結果、思うような状況にならなかったら責任転嫁をしてしまいそうで、そんな嫌な行動は取りたくないと避けていたらしい。
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