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「また難しい顔して。眉間に皺が寄ったまま戻らなくなるぞ」
不意に額を弾かれる痛みにハッとする。目尻を下げて困ったように笑う翔太が、正面で肩肘をついてこちらを見ていた。
器用なことに、私は片手にフォークを持ったまま朝食の最中にボーっとしてしまったようだ。
「……ごめん」
窓からは清々しいほどの光が差し込み、鳥の囀りも聞こえてくる。
冬の寒い日が続く中でも陽の暖かさを感じる気持ちの良い朝。それにも関わらず、私達二人の間には重たい空気が流れていた。
「怒ってるわけじゃないから。ほら、レモンティーも冷めるぞ」
「……! そう、だね」
いつも私が飲む紅茶の上に浮かぶオレンジの輪切りを、彼の角張った指が差す。
翔太の言葉に込み上げた思いを私はなんとか抑え込んだ。
今はその何でもないような言葉に敏感になって、私は見たくない現実を思い知らされる。
カップを取る手の震えに、彼が勘づきませんように。
ああ、本当に、貴方は。
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