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ふと集中が途切れて、時計を見上げた。
午前2時。
右手の親指と人指し指でつまんでいたガーネットストーンを、トレーにかちりと落とし、小さくため息をつく。
さあさあと、窓の外に雨の気配がする。
静かすぎる6月の真夜中過ぎ、霧雨の音すら大きく聞こえた。
ううっ、と唸りながら腕をあげて伸びをし、脱力してぼんやりとテーブル上の石たちをみつめる。
昨日、インドから届いたばかりの可愛い子たち。
ひとつひとつ煌めきを確かめたり、写真を撮ったりしているうちにパーツの取り付けも試してみたくなり、あれこれとつい熱中してしまった。
だめだ、明日も仕事があるんだから。さっとシャワーを浴びて、もう寝よう。
「おやすみ。また明日の夜ね」
明里は名残惜しげに石たちをみつめ、小首をかしげて微笑んで呟いた。
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