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「あ~、疲れた!まだ火曜かあ」
週末まであと3日もあるよ、もつかな俺、などといいながら、淳也はリュックを床に置き、ジャケットを脱いで手慣れたようすで壁のハンガーかけに吊るす。
「もうすぐ異動入るかもなあと思うと、外回りしてても気が気じゃないよ」
「異動になったら困るようなやましいことでもあるんですか。ご飯食べます?」
「なに、なんにもないよ。清廉潔白。正しく誠実な業務を日々遂行しています。食べる、何?」
不実な恋をしているくせに。
「ハンバーグとマリネとスープ。マリネとスープは作りおきですけど…」
「わっ、うまそう。お願いします」
悪い人にはみえない。
常識はありそうなのに。
飲み会の帰りに抱き締められた。
好きなんだ、もっと早くに会いたかったと言われた。
初めて会ってから半年くらいたっていた。
馬鹿みたい、絶対に利用されてると思いながら、断れない。
自分でもわかっている。
なんて生産性のない恋なのか。
明里はため息をついて、食事を盛った皿をトレーにのせて運び、淳也の前のテーブルにおいた。
「わたし作業しますね。昨日石が届いたんです。注文がいくつか入ってるから」
行儀よくいただきますをした淳也が、箸を取りながら頷く。
「わかった、食べたら片付けておくね。そのあとシャワー使ってもいい?」
わたしはこくりと頷くと、ベッドのとなりの作業台につく。
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