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銀行員の仕事は嫌いじゃない。
でも3,4年もたつと、どんな社会人でもこのままでいいのか?という葛藤にぶつかるのではないだろうか。
明里は別の仕事をしたかったわけでもなかった。習い事をしたいわけでもなかった。
それでも新しい何かを始めたくて、街をうろついてみたり、ネットをさまよったりしていたとき、出逢ったのだ。
石たちに。
シトリン、瑪瑙、ガーネット。
ローズクォーツ、アメジスト、ターコイズ。
さまざまにキラキラ光る、ドゥルージーたち。
明里はいままでアクセサリーやジュエリーに興味を持ったことがない。
もらったこともないし、買った覚えもない。
ゆえにつけたことも皆無だ。
だから、それらの石たちを身に付けて着飾りたいと願ったわけではない。
ただ、自分の中の何かが静かに浄化されていくような、それでいて甘く酔いしれるような、何かに焦がれるような、そんな切なく胸をしめつける感情を、陽のひかりに透かした輝きに、蛍光灯の灯りにぴかりとした煌めきに、暗闇のなかでの冷たい手触りに、祈るような気持ちで求めただけだ。
それは抗いがたい感情だった。
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