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その小売店で、あるとき、
『手持ちのドゥルージーでアクセサリーをお作りします』
という貼り紙を見つけた。
そうだ、眠っている子たちをアクセサリーにしてあげたらどうだろう。
仕舞われっぱなしは可哀想だ。
わたしはアクセサリーをつけないけれど、誰か喜んでつけてくれるひとがいないだろうか?
慌てて小売店の店長に尋ねると、店長は少し考えて言った。
「高梨さんなら、ご自分で加工出来そうですよ。お持ちの量も多いし、手作り品で販売されたらいかがですか?」
それまであまり気にしていなかったが、だいたい取り寄せたストーンたちには、加工用の穴が空いていた。
ネットで14Kのピアスパーツを取り寄せ、震える手で初めてパーツを取り付けたときのことを、明里は昨日のように思い出せる。
それは最初の春に、わたしのもとへとやってきたアメジスト。小さく丸く、テーブルの上で静かに煌めいていた。
ちょうど家に来ていた淳也が、シャワー上がりに、おっ、なんかやってる、と言って背中側に座り、腰に両手を回してわたしの肩ごしに、面白そうに手元を覗きこんで言ったのだ。
綺麗だね、なんだかちっちゃなしじみの身みたいな形だね、と。
わたしは淳也の独特な表現に少しウケて、ペンチを持つ手元が震えるのは、笑っているからなのか緊張しているからなのかわからなくなってしまった。
あの時のような感情は、今はもうない。
あれから2年たった。
淳也とこんな関係になってからは4年。
異動サイクルからいえば、そろそろ彼は家族と共に、違う土地へと旅立つだろう。
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