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おれは、いつ。
捨てられるんだ?
もう信用出来るものなんてない。
ずっと一人で生きてきたんだから、
これから1人でもこの生き地獄を歩き続ける。
神の思い通りで癪だけど、
レーネは、俺とは違う。
一緒に居たらいけねぇ。
「おれは、お前が好きだ。」
ステンドグラスの前にいたレーネは動きを止める。
「会ったばかりでバカみてぇと思う。けど好きだ。だからこそお前から離れなくちゃいけない。俺は、お前といるべきじゃない。血濡れの死神と水の妖精、、、俺は怖いんだ。もう、二度と捨てられたくない!!」
レーネは俺に抱きついた。
やっぱり背は俺より低くて、華奢で、それでいて俺と同じ呪いを持つもの。
「レーネ?」
「、、、私、あなたに捨てられるのが怖かった。私があなたを捨てると思って?私、ひとりぼっちはいやって言ったでしょ。」
ああ、そんな綺麗な瞳で。
俺の汚ぇ目を、、、
やめろ、やめろ
腐ってしまうぞ
「あなたの目、ほんとに綺麗だわ。月みたい。みんなを暖かく照らす月。私、あなたが捨てたとしてもついてくわ。ひっつき虫みたいにね。」
「俺を、捨てない?」
「信じなくてもいいけど、私が嫌いなものはね、、、」
レーネは涙を流していた。
小さな嗚咽に体を震わせて、、、
俺の胸の中で。
「1人で寂しくステンドグラスの前で、独り言を言うこと。癖なの。誰かいないと、私の事、誰も見てくれないから。独りだと狂っちゃう。」
「、、、俺はずっと見てたい。けど、、、」
「じゃあ出てかないって言うまでこの手は離せないわ。」
顔を胸に押し当てたまま、レーネはこちらを上目遣いで見る。
「ねぇ、リウ。私と結婚して。」
「は、、、?」
「これなら、一緒に居られるよ?」
「は、話が飛びすぎだ!!俺は!!」
「ここを出てどうするの?信用出来ないならしなくていいわ。私のそばで、私の事なんて気にせずに、生きてよ。私のことは構わなくていいから。私を釘でうちつけて良いから。あなたがここに居るだけで、私は幸せだから。」
レーネはまた綺麗な目で俺をみる。
真剣な目だ。とても嘘をついているようには見えない。
ここは、折れないといけないかもしれない。
俺は、この子を愛してしまった。
水の妖精のような子。
レーネ、俺は好きだ。
お前のことがどうしようもないくらいに愛しい。
俺はレーネを胸に強く抱く。
「出来るわけないだろ、お前を打ち付けるなんて。俺は人殺しだけど、お前を殺したくないって思っちまうんだよ。永遠の瞬間をお前と過ごしたいとすら思っちまうようになった。水の妖精のように綺麗に踊るお前をみてしまった。その目を、その優しさを、、、感じてしまった。」
「リウ、、、」
俺は精一杯顔の熱を振りはらう。
「愛してる、レーネ。」
俺はレーネの口にキスをした。
すかさずレーネは俺の頭をガッチリホールドし、にがさない。
「愛してますわ、旦那様」
こうして、2人だけの終わらない永夜が始まった。
水の妖精のごとき美しい少女と、
無辜の怪物は、
手を繋いで歩き始めた。
これから、寒い日は手を温め合い、
暑い日は汗を拭きあって、
眠い時は2人で子守唄を歌う。
痛い時は互いに励ます。
そんな愛に満ちた暮らしが始まるのだ。
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