名無しの殺人鬼

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名無しの殺人鬼

 昔々、異世界のある集落に一つの夫婦がおりました。夫は狩人、嫁は服作りを生業としており、のんびり楽しく過ごしておりました。 そんなある日、嫁が男の子を産みました。最初は喜びましたが、その様子を見ていた占い師から、その子は不老不死ではないかと言われ、気味が悪く思った夫婦は男の子に名前すら与えず、ほとんど放ったらかしにしていました。それでも、死ねない男の子は愛されぬまま成長し、立派な青年になりました。 どれほど月日が経とうとも身体は若いまま、それに彼はどんなに傷つけても死なない。それを周囲からも気味悪がられ、親にも蔑まれました。 「お前なんか産まれなければよかったのに。」 「気持ち悪い!亅 「こっちへ来るな!化け物!亅 「その目でこちらを見ないでよ!亅 「お前なんか消えてしまえ!亅 そんなことを言われ続け、彼の心は壊れていきました。 ある日、夫婦は彼を捨てて別の所で暮らそうとします。でも、彼は俺を連れてってと粘りました。何も与えられた事もないし、ご飯もつくってくれない、本も読んでくれない、勉強もさせてもらえない、だから全部自分でやってきた。愛される日が来ると信じて。 それなのに…。 「待ってよ!置いてかないで!亅 そう訴える彼に夫婦はこう投げ捨てました。 「その汚い目でこっちを見るな。お前はもう、俺達の子供じゃない。ついてくるな。亅 それを聞いた瞬間、彼は自我を失いました。気がつけば肉の塊の上に鎮座し、夫婦の目玉を抉っていました。その姿を見た集落の人々は驚きを隠せず、すぐそこの狂気に目を見開きました。彼はその時、気づいたのです。 親が俺を愛さなかったのは見てなかったからで、見なかったのは派手な事をしなかったからだ。と。 その時彼は人を殺すワクワクした感情や人肉の美味しさ、自身を愛さない者への憎悪を覚えてしまいました。 自分が誰にも愛されないと知りながらも。 彼は集落の人間を憎らしく思い、誰彼構わず殺してしまいました。そして母が持っていた黒いパーカーのような服を着て、パーカーのフードを被り、何故か持っていたナイフを持って、集落を後にしました。 この時、名無しの殺人鬼、、、いえ、無辜の怪物が生まれてしまったのです。
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