1人が本棚に入れています
本棚に追加
教会の祈祷部屋にずらりと並ぶ木の長椅子に座る。
思いっきり足を前の椅子に置いて。
そしてガキの話を聞く。
驚くべきことに、ホワイト王国には国宝として不老不死の妙薬を神から与えられたそうな。
「この世で不老不死は迫害対象。なにより、地獄のような世界からは永遠に逃げられなくなる。私たちは老いることも死ぬこともない。人間ですらないのよ。それが、王を殺した罰。ま、牢獄からは逃げてやったけどね、」
この世界では不老不死とは、神にしか許されていない。
しかし、神は気まぐれに人に力を与える。
神とはいえ、1度与えた力は戻せない。
つまり俺はその通り永遠に死ねないのだ。
「私の場合、薬にその力が与えられていた。それを飲まされ、鎖に繋がれた。神にとって私たちは愛玩具でしかないのよ。だから、私は神になんて祈らない。」
俺も、神に祈るくらいなら自分の腕を切り落として手を合わせられなくする。
神々は楽しんでいるのだ。
虫やネズミを入れた雑草だらけのお手製箱庭を覗く子供のように、俺たちにとけぬ呪いをかけて遊んでいるに過ぎない。
こいつ、、、
「わかってんじゃねーか、お前。」
「ふふ、お褒めいただき光栄ですわ。」
面白おかしく貴族みたいな言い方して、ガキは笑ってやがった。
「そうだわ。あなたに名前を与えないと。」
「名前?んなもんつけてどうする?」
「あら、愛称がないと呼びにくいわ。あなただって名無しの殺人鬼さんなんて呼ばれたくないでしょ?」
確かにそうだ。ガキの発言は的を射ている。
うーんと考え込むガキの顔をじーっと見ていると、ガキは照れくさそうに笑う。そして考えついたように椅子から跳ね起きた。
「リウ、なんてどうかしら?」
「リウ?」
ガキはニコリと笑うと嬉しそうに話し出した。
「リウ、龍からとってみたわ。ドラゴンって、この世界にいるかどうかすら怪しいけど。愚か者は殺し、賢きものは叡智へと導く。あなたにはそんな強さがあると思った。どうかしら?」
ふぅん、
リウか。
「いいんじゃねーか?ガキの癖にネーミングセンスは悪くねぇ」
「だーかーら!ガキはやめてちょうだい。私の名前よ!レーネ!!ほら、せぇの!」
「れ、レーネ。」
そうそうそれよ!と言わんばかりにニコニコと嬉しそうに話すガキ、、、いや、レーネ。
けど、まだ警戒は解きたくない。
また、捨てられるかもしれない。
レーネは、あいつらとは違う目をしている。
その目は、なんだ?
何を考えている?
少なくとも、罵声を浴びせる目では無かったけども。
訳分からんまま、俺は眠くなった。
聞けば、ベットがひとつしか無いらしい。
まあ、恩はあるし俺は椅子で眠ろう。
そう言って椅子で寝てしまったレーネを俺はお節介にも運んでやった。
そして、ボロっちいけど暖かいだろう毛布をかける。
俺は聖堂へ戻り、椅子に腰かけて目を瞑った。
最初のコメントを投稿しよう!