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貴婦人の館
「貴婦人の館?なんかダサい
感じがするのは気のせいなのかあ?」
佳江は、仕事が忙しかったので、早く帰って、お風呂入って寝たいのだ。
博美は「見てよこれ!桜子のインスタほんとむかつくわ」
桜子が華やかなドレスを着ているのだが、ウェディングドレスの類いではない。
フランス宮廷のスタイルってかんじだ。
「この女、貧乳のくせしてこのオッパイかなり盛ってるわ!何よこの谷間。詐欺だね」
「博美さあ、ここは会社のロッカーだよ。みんなに嫉妬全開の話を聞かせちゃいかんわ。桜子のインスタ見なきゃいいのに」
博美は周りを見回したが、それぞれのおしゃべりに夢中でこちらに耳を傾ける者はいなかった。
「どうしても見ちゃうのよ。インスタだけじゃないわよ、ブログもチェックしちゃってるわよ。あいつのブログ暗くてじめじめして、ざまあな内容だったからめっちゃ面白かったのにさあ。料理失敗して竜也に叱られたとか笑えたわ。
でも最近はインスタグラムの写真が妙に幸せアピールすごくて、もう悔しいったらありゃしないわ」
「竜也と桜子のことは忘れなさい」
「付き合ってよ、貴婦人の館」
「今日はかんべん」
できれば佳江は帰りたい。
「ブス桜子がフランス宮廷風ドレス着てるの見ちゃったし、このままじゃ悔しくて帰れないのよお」
博美の粘り勝ちだ。
佳江にはことわる気力もなえてきた。
博美は仕事が早くて協力的だし、こんなときは付き合ってあげるとするか。
ピンチのときにはいやな顔せず、恩着せがましくもない。
貴婦人の館は池袋にあった。
小さめのビルで4階建。
入ると「ボンソワール、マダム」
なんて言われる。
「ボンソワール」なんて博美はごきげんで返した。
衣装を選んで、インスタグラムにアップしたりお茶したり食事もできる。お茶や食事のときに汚したらクリーニング代は別。
へあもドレスも宮廷風にして二人でカモミールティーを飲んだ。
心を落ち着けるお茶だってことだけど。このお茶まっずいねというのかふたりの感想だ。
腕に自信のある者はここに衣装を持ち込んでレンタルで稼いでいるらしい。
ドレスと言ってもいろいろあるみたい。
色々借りて、一時間以内ならふたりで一万円であれこれ着てインスタグラムにアップしまくり。
フランス宮廷風とアラジンにでてくるようなジャスミンのようなのだとかマーガレット模様のドレスのスカートがふわっとしたのとか。
「桜子は一枚で、私はムフフ
勝ったわ、わーはっはっは」
ボンソワールの人が「宿泊もできるわよ特別な人だけにすすめているの」と言ってきた。
「泊まります!だって絶対桜子は泊めてもらってないから私は桜子より特別よ」
泊まります以外は佳江にだけささやいた。
「あのさあ、私に思ったこと全部駄々もれさせないでよ。腹黒いあんたの言葉はけっこう私のストレスになるんだよ」
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