【1】 出会い

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俺は戸惑って、彼女の手からビニール傘を受け取っていいのか不安になった。 「あ、あの…?」 「あ、ごめんなさい」 彼女は指で涙を拭いながら小さく笑い、聞こえるか聞こえないかくらいの声で「嬉しくて」と言った。 「…へ?」 聞き間違いか? そう思いながら聞き返すと、彼女は初対面にも関わらず、俺にこう言った。 「おかえりなさい」 おかえり…って、どういう時に使う言葉だっけ? 困惑した俺は、そんなことを必死に考える。 どう考えたって、初対面の相手には使わない言葉だった。 使うとしたら――メイドカフェくらいなんじゃないか。 「あ、ごめんなさい。つい」 彼女は早口で言って、それから回れ右をする。 そして、駅の乗り場の方へ歩いていく。
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