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それから
東京へと戻る飛行機の中、後ろに座る落ち着いた男女の会話を盗み聞いて初めて、ある高名なミュージシャンが五月に亡くなっていたことを知った。彼の代表曲がどのようなものであったか、調べようとハンドバッグから携帯を取り出して、そのおよそ二秒後に、それが機内では全く意味を為さないことに思い至り人知れず耳を赤くする。それで仕方なしに、澄ました顔で携帯をハンドバッグにさっさと仕舞うと、目をつぶってインターネットと比べると些か頼りない自分の記憶を辿ってみることにした。
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