じゅうに

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夜明けだ。辺りは夜の闇から白々と景色を表していく。 黄土の大地。この辺りも昔とは見違えてしまった。 少しずつ昇る太陽の(だいだい)は、変わり果てたこの地を鮮明に映し出す。 ここ数年前までは、黄緑の新芽があちこちで見られ、 木々も草花も深い新緑(しんりょく)の森であったのだが、 大地に豊富にたたえられた水が汚染され始めると、 辺りは暗紫(あんし)の苔で覆われるようになり、 腐った桃のような、甘く、咽ぶような香りを放つようになった。 コレは赫怒(かくど)した妖精の仕業か、はたまた傲慢な人間の仕業か。 見る間に辺りは茶褐色の枯れた草花へと化していく。 晴れ渡ることはほぼなくなり、常に黒く厚い雲に覆われ、 青空をみることも少なくなった時に、 今日のこの天候は非常に稀なことであった。
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