好きなんて、聞きたくなかった

1/1
前へ
/1ページ
次へ

好きなんて、聞きたくなかった

「なんで……っ!」  思わず、そんな言葉が出た。彼から告げられた言葉に。 「なんで……なんで……?!」  問いかけたところで、あいつが困るのはわかってる。それでも、吐き出した言葉は止まらない。 「……なんで今更、俺のこと好きだとか言うの……っ?!もう、遅いよ……っ、今更なんだよ!俺だって……俺だってお前のこと好きだったよ!でも、何で……なんで今いうの……?!諦めようとして、ようやく諦めることができそうだったのに……っ」    溢れてきた感情は止まることを知らなかった。こんな感情初めてで、目頭に熱いものが溢れる。それが、最近やたらと流れることが増えた涙だ。腹が立っているのに、涙が出て、余計に悔しくて、やるせなくて、ぶわりと溢れた涙を戻したくて、下を向いていた顔を上げ、顔を隠す。  泣き顔を見られたくなかったから。 「……ごめん、俺ずっと気が付かなくて……その」 「もう、今更だよ、諦めたかったのに。お前が、俺を通してほかのやつ見てんのなんか知ってんだよ!あいつに振られたからってあいつと似てる俺を選ばないでよ」 「そんなんじゃ……!」 「俺は、お前の好きって言葉、いらないし、聞きたくなんて、なかった」
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加