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……だからあの時も、助けられなかった。
関わるのが、自分も巻き込まれるのが嫌だったから。
「……バカだな…。」
約10年間…僕が背負ってきたものを、たかが大雨で無駄にするところだった。
何のために他人と関わる事をやめたのか、他人の物に触る事を避けたのか、もう一度よく考え直せ、と自分に言い聞かせた。
「…もしかして、傘無い?」
そんな時、自分の背後から声が聞こえた。
思わず振り返ると…其処にはクラスメイトの女子が立っていた。
話した事は勿論無い。しかし、席が近かったため顔と名前だけは覚えていた。
「…うん、そうだけど…。」
他人と話すなんて、久し振りだった。…どう話していいかもわからず、聞かれた事にただ応えただけだった。
「…もし良かったら、一緒に…入り、ますか?」
そう言って彼女は、傘立てに入っていた傘を取り出した。
その傘は先程、僕が使うか使わないかで悩みに悩んだビニール傘だった。
---雨は相変わらず止む気配は無い。
「…お願いします。」
僕はその言葉に甘えた。
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