2人が本棚に入れています
本棚に追加
「よくこういうことするの?」
「しょっちゅうはしないよ。」
時計は長針も短針もやや右にうなだれていた。カチカチ音を立てるせいで寝付けなかった。ぼんやりしてると楓が唐突に言った。
「今まで一番好きだった人はどんな人?」
「そうだな。誰だろう。」
本当は、迷うはずない。どんな人だったかなんて一口に語りきれやしない。この場を当たり障りのなくやりすごしたかった。
でも、楓は僕の心を全て見透かし、なだめるように「知りたい。」と言っvた。
「長くなるよ。」
「それでも良いの聞かせて。」
僕は楓に顔を押し付けて、泣き出すのを堪えながら、緋奈を想った 。楓は僕を抱き寄せて額にキスをくれた。
僕は最低だ。でも最低から抜け出す最後のチャンスだと思った。
点と点を結ぶ時、始めはなんてことないズレが、線を伸ばすうちにだんだんと大きくなっていく。点が離れていればいるほどズレの存在は見逃せなくなって、3年でこんなところまできてしまった僕は死ぬ頃にはどこにいるんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!