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緋奈との記憶は、日に日にぼやけてきてる。色を失い、端々で完全に消え去った。失った部分を、僕は愛しさと憂いで無理矢理に修理する。こうやってできた記憶と妄想が入り混じったものを、僕は今でも愛してる。虚空の想いは膨れ上がって、未だに僕は彼女がこの世にいないことを受け入れられないでいる。
写真に写る彼女の姿。これだけは本物だった。鼻は高すぎず、低すぎず。化粧をしていない真っさらな肌は絹ごし豆腐みたいに滑らかだった。深い二重と大きな黒目はどこのパーツよりも魅力的で、目をほんの少し細めてキスをするとき、彼女の黒目には、楕円形に歪んだ僕の姿がはっきりと写った。
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