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「天使ね。そう思うなら勝手にしていればいいわ。」
この女は私と仲良しごっこがしたいのだろう。勝手に足掻けばいい。メリアははい、と言って微笑んだ。
そのまま早くも数時間が経過した。メリアは夢の中へ、私はずっと窓の外を見続けた。ただただキラキラと表面を輝かせる海面。時折複数の小さな島々がちらちらと過ぎていった。
「お嬢様、あともう10分で到着です。」
夢と同じく操縦士が告げる。私は返事を返して尚外を見続けた。段々と広大な緑が迫ってきていた。
このヘリの航路は、まっすぐ飛び続ける、それだけ。楕円の島の片側の上空を通り、反対側の都市のヘリポートへ。
安全ベルトを、と促されメリアもはっと覚醒してベルトを締める。私の眼下にはいっそ眩しいほどの緑が一面広がっていた。
「お嬢様、ようやく誘導灯が小さく見え始めましたよ」
操縦士がそう告げるのにつられて前を見る。確かに小さく小さく赤く光っていた。
私は不意に夢を思い出した。この操縦士に感謝と謝罪を、と。
「…お嬢様、もうすぐ…もうすぐに到着です…。」
操縦士が鼻を啜る。夢を辿る。
夢の続きを知りたいがために。
「…ローウェン、あのね。」
突如としてギィインと頭に鳴り響く。体は重力に弄ばれて色んな方向へと投げ出された。とても苦しくて、とても痛くて。
意識は突然に無くなった。
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