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結局、なんやかやといちゃいちゃしていたら、晩飯の時間になり、禅が晩飯を作ってくれた。たまごかけご飯をフライパンで丸く焼いたもので、チーズとケチャップでアクセントをつけて、ちょっと変わったものだったが、味はよかった。やっと座れるようになった拓海が、旨い旨いとパクパク食べて、禅は満足そうに笑う。
ふたりで他愛もない話しながら、晩飯を終えると、禅が手早く後始末をする。綺麗に食器や調理器具を洗うと、とんとんとんと2階に上がってくる。
「あー、もう帰んないとなあ」
「そうだね、明日学校もあるし」
「離れるの嫌だな」
「そ、そんな事言われても……俺、何て言っていいか……」
困り顔の拓海に、ちゅっとくちづけると、そんなに困った顔すんなよ、と笑った。
「予備校、一緒に行こうな。で、大学もおんなじとこ行って、一緒に住もう」
「うん……一緒に、ね」
嬉しそうに笑う拓海は、そこらの女の子より可愛いなあ、と禅が思ってじっと顔を眺める。
「な、なんだよ」
「可愛いなあと思って」
「う、嬉しくない」
「いいじゃん、可愛くないより」
「そ、そ、そうだけど、男だし、俺だって」
「そりゃ分かってるよ……それでもなお可愛い」
「なんだよ、それ」
「まあ、怒るな」
──気がつくと7時半だった。
「お、本格的に帰んなきゃな」
「うん、気を付けて」
「ん、明日学校でな」
「うん……なんか色々ありがと」
名残惜しそうにぎゅっと拓海を抱きしめると、その髪にくちづけてから、離す。
「……じゃ、な。拓海」
「うん」
禅はゆっくりと立ち上がり、ばいばい、と手を振って部屋を出る。
それを見送って、とんとんとん、と階段を降りる音を聞きながら、拓海はきゅっとくちびるを噛む。
明日、どうなるだろうか。そればかりが気にかかって、なかなか寝付けなかった。
──禅と同じ大学に行って、一緒に住む。まるで夢のようだった。
少し考えただけで、足元がふわふわする。大好きなひとと、ずっと一緒にいられたらどんなに幸せなのか。この週末に味わってしまったから、もっとずっと一緒にいたいと思ってしまう。
20分程して、禅から電話がかかってきた。
「も、もしもしっ」
『あー、寝てた?』
「まさか。起きてたよ」
『予備校の件、OK出た。あと、同居の件も』
「まだ願書も出してないのに、気が早いな」
それ以前にふたりはまだ高校2年だ。
『早い方がいいじゃん』
「禅らしいよ」
くすり、と笑うとなんだよーと、照れたような声が返ってくる。
『もう目標も準備も出来たから、あとは実行のみだ』
「それが一番大変だって」
『まあなー。でも実行すんのは嫌いじゃないし。目標具体的な方が努力しやすい』
「あー、なんか禅らしい」
『そう?頑張っちゃうからな、俺』
「俺も頑張るよ。お前に置いてかれないようにさ」
……しばらくどうでもいい話をして、電話を切った。拓海の胸がほこほことあたたかくなる。
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