0人が本棚に入れています
本棚に追加
ああ・・世界が赤い。
世界が、燃えている。いずれ、燃え尽きるまで、それは続くのだろうか。
そして、それを・・その終わるまで、ただ見つめるのが、僕への業罰になるのだろうか。それとも、そのあとに続く、永劫の闇の中を、ただ一人生き続けることが。
それは、やはり・・重い。
わずかな”幻魔”を倒すためだけに、ひとつの世界を葬った。何億という人命と、それ以上の無数の命を奪った。
それは、正しいのか。
それでも、なお正しいといえるのか。
正しいのだ。
”幻魔”は病原菌と同じ。人々を侵し、そして新たな幾多の”幻魔”に生まれ変わらせ、宇宙に戻り、次の世界を探し、繰り返し、蔓延する。
病原に侵された内臓を摘出し、破棄するように。侵された世界は、ただ消滅させなければ、”他の世界”が生き残れないからだ。
当然の犠牲。
これが、正解である。
それが、この世界の常識である。
それが、正義である。
僕も、それを確信してきた。
しかし、今、自分の目の前で、自分の命令でひとつの世界が燃え尽きようとしているのを見るのは、違った。
われわれ、大連盟の多くの将官が、こうして”幻魔”に侵された世界を”処分”してきた。確かに、”処分”は、最後の手段であった。
その前に、もっと小さな”浄化”で済ませる場合もある。
しかし、そのあと”再発”すれば、当然のように”処分”が選ばれる。そのひとつに、僕が、その担当に選ばれた。
その星系に必ず存在する小惑星にブースターを装備し、軌道を変え、その世界に落とす。それは、決して困難ではない。むしろ、”通常業務”であった。
それが、この戦争なのだ。
これが”幻魔大戦”なのだ。
他の世界を守るために、今までにも、何百という世界が、こうして宇宙の藻屑として消えていった。
僕も、その中で同じ仕事をしただけだ。
だから、この結果に、僕は満足し、その褒美を期待していいはずだ。そうだ、それでいい・・それでいいのだ。僕は、僕たちは、こうして、”より大きな世界”を守ってきた。
”幻魔”は辺境の世界を侵す。大連盟の中枢となるような”進んだ世界”では、その汚染があったとしても、かなり早期に発見でき、隔離、殲滅も不可能ではないからだ。
この”進んだ世界”たちをまもるためなら、”辺境”の未開の惑星が、どれほど滅しようと、その存在価値は低い。悲しいくらいに低いのだ。その気になれば、その世界をその科学力で再生することも不可能ではないという。
もっとも、それが実施されたことがあるとは、僕は聞いたことは無いのだが。そんな”辺境”の世界をわざわざ蘇らせる価値は無いではないか。
最初のコメントを投稿しよう!