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「この世に”幻魔大王”はいるのに、”大いなる存在"が存在しないと考えているのかね」
「”幻魔”は現実の脅威だけど」
「ならば、どうして”善なる精神エネルギー体”を信じない?まあ、そのほうが、こっちとしてはありがたいのだけどね」タイガーは、宇宙船の窓の外に見える破滅世界を見下ろしながら満足そうに言った。
「”善なる精神エネルギー体”?ああ、うわさに聞いたことがある・・”神の如き者”フロイ・・だっけ」
「ああ、そうだ。しかし、どうにも、この世界ではフロイは影が薄そうだな」
「陰が薄いも何も、今は、うわさだけだよ。だってそうでしょ。実在するのなら、きちんとフロイが”幻魔大王”を倒してくれればいいのだから」
「確かに」
「違うかい?」
「向こうには、向こうの都合があるのかも知れんがな」
「はん、大人の事情みたいなことはいわないでほしいな、その点に関しては」
さすがに、僕もこの正体不明以上に怪しすぎるサル系知性体の男に腹が立ってきたのだ。大体、何者なんだ、この醜い男は。
「どうやら”神のごときもの”フロイは、お前さんたちを”通じて””幻魔”を打倒したいようだがな」
「僕たちを通じて」
「ああ、”すべてはエクササイズ”とか、ぬかしてな」
「解決すべき演習課題・・?」
「そうだ。そしてそれを解決することで、おまえさんたちは、さらに飛躍できる・・ということらしいがな」
「そんなことを、僕たちに?」
「ああ、それなのに、おまえさんたちは”幻魔”と同じように、ああして、世界を破壊するしか能がない・・ま、それも解決方法のひとつというものなんだろうがな」
「違うというのか、あんたは」
「ああ、そう考えているのかも知れんな、あのフロイはよ。まあ、わしの知ったことではないのだが」
「なんだか、フロイの知り合いみたいな言い方を・・」
「なんだ、そんなこと、考えたこともないって顔は」
「実際、ない・・な。”幻魔”は駆除すべき対象という感じが、この世界の常識の気がする」
「なるほど・・悪霊とかなんとかというより、病原菌扱いか。科学の進んだ大連盟世界らしい発想かも知れんな、これは」
「それでは、ダメなのか」
「それで、何万年、飽きることなく戦いを続けているんだね。それを”いたちごっこ”というのじゃないのか、普通」
「だからこそ、今はこの戦いそのものが、生活の一部になっている・・それだけだ」
「じゃあ、それで利益を得ている連中もいるんじゃないか?」
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