王都ルベルターザの斜陽

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       ―Ⅴ―    昼食に立ち寄った村は、そこを所領とする、カーンダーク族の厳重な警戒態勢下にあった。 小さな村ではあったが、カーンダーク族にとって、重要な交通の中継地点なのだ。 セニは、ここの門番と親しく話して通してもらい、食事を提供してくれる宿の者とも、親しげに会話していた。 食材は、シャランナの街での食事に比べれば、種類は少なかったが、充分な量と、食感の違いによる満足感を与えてくれた。 セニたちとともによく礼を言って、再び馬車に乗り、一路、目的の地、王都ルベルターザへ。 カーンダーク族の放牧地を突っ切らせてもらうということで、黒いヌッダの群れを遠くに見ながら夕方まで、馬車に揺られる。 やがて、温かな赤のなかに黄が混じる空色のなか、王都の壁のなかに入った。 この漆黒の壁は、明らかに異能の発現によって構築されたもので、こんなものを人が造ることができるのかと、ナラカは驚嘆しつつ馬車の窓から見上げた。 一行はそのまま、ゆっくりと街路を進んで、中心地近くの宿の前で止まった。 明らかに上等な宿で、建物の外装に派手さはなく、繊細かつ佳麗(かれい)だった。 内装も、とても洗練されていて、それは宿の女主(おんなあるじ)の所作にも表れていた。 この宿でも、(ふた)()の、居心地よい部屋に通してもらい、衣装箱の服は自由に使ってよいと言われた。 一応、シャランナの宿で提供された服を、何組か持って来ていたが、洗濯の機会など考えると、明日(あす)の服装は、こちらの宿の物を使った方が、そのまま返せてよい。 1人になって、明日(あす)、着て行く服を選び、衣装箱の横の椅子に置いた。 ふと窓の外を見ると、薄暮のなか、通りを歩く者は少なく、どこか寂しい印象を受けた。 どちらかと言うと、シャランナの街路の方が、明るく賑やかだったが、通りの違いかもしれない。 窓に近付いて、遠く街なかを見渡したが、明るそうな通りは見付けられなかった。 王都とはこんなものかと、なんとなく首を傾けて、それから大きく呼吸した。 いよいよ明日(あす)は、叔父との対面だ。 言葉は交わせないかもしれないけれど。 とにかく、会う。 最後に会った夜、見合わせた顔が、ふと胸に浮かぶ。 相手は、自分の顔を見分けるだろうか。 ふとそんな考えが(よぎ)ったが、意識に残ることはなかった。 ナラカは着替えを持って浴室に向かい、明日(あす)に備えて気持ちを整えることにした。
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