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王都への道ゆき
レイントーン族は温和な部族だ。
部族同士の争いが頻繁に行われるこの国で、そのような評判のある部族が平穏を保っていられるのは、それが叶うだけの勇猛さを備えているからだ。
迎えのあとについてムラに入ると、体の大きい男たちが多い。
この体格差は大きいなと思いながら、ナラカはムラの中心部に招かれた。
セニはナラカとヤトを、ただ旅の連れだと説明し、詳しくは語らず、また素性を聞かれることもなかった。
もてなしの料理は、質素ではあるが、貴重な食材も含まれており、ナラカたちは部族の者たちの心尽くしの対応に深い感謝を述べて、翌朝ムラを離れた。
次に立ち寄ったのは、この国に点在する、商い街だった。
商い街には、多く遊牧して暮らす者たちが、品物を売り買いするために集まる。
宿の造りは上等とは言えなかったが、ならず者は立ち入らないよう、見張りの者が目を光らせるなど、安全に不安はなく、料理は満足できるもので、ちらりと耳にした値段も、やや高いが納得できる、良心的な経営をしていた。
ここから次の宿泊場所までは近いが、そのあとは距離がある。
先に街で昼食を摂ることになっていたので、朝のうち、ナラカたちは街の店を見て回り、適当な食堂に入って食事を済ませた。
それから、宿に預けていた荷物と馬を受け取り、出発する。
次に向かったのは、小山の麓にある村で、村長の屋敷の母屋に泊めてもらえた。
ごく小さな村だったが、人々は笑顔が多く、心にゆとりが見られる。
ナラカは、セニと村長の話から、とても堅固な結界によって、村全体が守られていることを知った。
「ほかの村にも結界はあるの?」
ふと気になって、宛てがわれた部屋に戻る途中でセニに聞くと、ないだろうなと答えた。
「ここの村には世話になってるから、アルシュファイドから強い彩石を持ち込んで、強力というか、まあ、いい感じの結界の構築と維持の仕方を教えたんだ」
「いい感じ…?」
「ああ。強力な結界は、術者の力量が求められる。だから強力さではなく、この村では、悪意を持つ者に忌避されるような術を展開している」
「悪意を持つ者に忌避される…」
「ああ。4種の異能の合わせ技でもあるから、まあ、難しいんだが、この村にいる者たちで維持できるものだから、現状が最善だ」
「そういう…術は、アルシュファイドにしかないの?」
「まあ、そうだな。まず、結界の長期維持は彩石がないと難しい。構築する機会がないなら、技術も進歩しないだろう」
「そうなの…」
5年、マディーナ族のムラにいて、同族のムラが襲撃された話は、何度も聞いた。
ナラカのいたムラは直接の襲撃を受けることはなかったが、部族全体では、被害もそれなりにあったそうだ。
それが、この国では日常なのだ。
寝台に潜り込むと、ナラカの頭には様々な事柄が去来した。
王都に向かうことの意義。
叔父の顔。
国の崩壊の話。
遊牧する者たちの交流の必要から造られた街。
その街の様子。
小さくても平和に、それなりに豊かに暮らせているこの村。
結界に用いられる技術。
明確にどことは判別できないが、それぞれに重要な部分がありそうな気がする。
だがとにかく、今は眠ろう。
叔父の顔が浮かぶだけで、心が苦しく、消耗する。
今はもう、眠りたい。
眠りたいのだ。
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