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俺の恋人はとんでもない奴だ。
ふるいつきたくなるようなほどの美人なんだが、その性格はすごく面倒くさくてイカれている。
まず愛の言葉がなかなか伝わらない。『愛してる』って言っても嫌そうに眉を顰めるだけだし、『好き』だって言っても面白くなそうに『あ、そう』だって。
でもその性格悪そうな顔がなかなか可愛いかったりする。
毎日会いに行くのだが『来るな』ってドア閉めようとしやがる。
もちろん少し強引に開けると、途端にしおらしくなって俯いて小さく震えるんだ。きっとあんな仕打ちしておきながら、俺に嫌われたくないんだろうな。
馬鹿な奴。俺が嫌うわけないのに。
昔から一途で純情は俺は恋人を大事にするんだぜ。とは言っても歴代の彼女達は、大体俺のこの顔で嬉しそうに寄ってきて、すぐに飽きて逃げ出そうとする。
そんな傷付いた俺のところに現れたのがこいつ。
俺を見ても興味なさそうで、でも初めてかけてくれた言葉に愛があったんだよな。
間違いない、あいつも俺に惚れている。つまり愛し合ってるんだよ、俺達は。
そうだ。あいつイカれた趣味があってさ。
グロいものが好きでさ。あとオカルト?そういうのも興味あるみたいで。最初そういう書籍を何点か贈ると興味深そうに読んでいたが、そこはツンデレ。すぐに『もういらない』って。
こんな本には飽きたんだって思ったから、俺は知恵を絞り考えた。
そして思い出した。昨日のことだ。
☪︎*。꙳☽︎︎.*·̩͙
………二人でテレビを見ていた。
初めてセックスした日で、俺は幸せの絶頂だった。
ぼうっとした顔でテレビを見ているあいつの横顔がすごく綺麗で可愛くて愛しくて、ずっと眺めていたいくらい。
『………犯罪者』
ん?と聞き返すと驚いたのかビクリと震えて小さな声で。
『なんでもない』
って。ふとテレビに視線を移すと、映っていたのは確かに犯罪者だった。
たくさんの女性を殺して、その手首を切り落としてコレクションしていたっていう変態野郎。しかも手首の爪に赤いマニュキュア塗って持ち歩いていたってよ。
まったく、反吐が出るほどの最低な男だ。
さてはこいつ。この変態野郎の気持ちが知りたいとか何とかで、その手首持ってきてくれとか言うんじゃないか。
視線を戻すと、熱心にテレビに見入っているようだ。
嗚呼、なんで奴だ!
やはり俺の恋人はとんだイカれたやつだ。
꙳★*゚꙳★*゚
俺は鍵を回す。ガサリ、とビニール袋の中のプレゼントが音を立てる。
ドアをあける。
「………プレゼント」
赤いマニュキュアも塗ってやったぜ。
まぁ、お前の方がきっと似合うだろうけどな。
後で塗ってやるよ。愛し合ってからな。
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