南野と会う

2/3
82人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
会社に居ても、南野さんのことが気になり、仕事に集中出来なかった。 母を捨て知らなかったとは言え、俺を捨てた人だ、あんな人、構うな放っておけ、と思う一方で。 病院で苦しんでいる姿が、頭から離れず、気になってしかたがなかった。 思い切って一週間有給をとって、南野さんを看病しようと思った。 後悔しないように。やれることをしようと決めた。 南野さんに言うと 「そんなことは、しなくてもいい、仕事に行きなさい」 と言ったが。 「気になって仕方が無いのです、思うようにさせてください。」 とお願いした。 南野さんは痛み止めを、点滴でとっているので、痛みがないらしいが、体の 置き所がないぐらい、気持ち悪いそうだ。 おれは、南野さんの体をマッサージしたり、摩ったりした。 「どーですか? ちょっとは、楽ですか?」 「  ああ‥いいよ、ありがとう。」 ちょっとは、楽になった感じだ。 母は、病院に来ようとは、しなかったけど、朝早く俺の家に来て、体にいいと 言われている漢方薬を煎じて飲ませてあげて欲しいと、持ってきた。 それが、毎日煎じて、持ってくるようになった。 昼間は、妻と娘が来てくれた。 娘は、保育所で覚えた、歌やおどりを披露して、南野さんの笑顔をさそった。 その時、初めて南野さんの笑い顔をみた。 闘病生活で、彼は全然笑わなくなっていた。 一週間、病院に寝泊まりし看病した、その間南野さんは、母と別れてからのことを教えてくれた。 南野さんは、高校を辞めて、高等専門学校に行ったらしい。そこまで僕も聞いていた。 その後、九州の国立大学で教鞭をとっていたらしい。教育学部の先生で社会の 教科書を執筆したらしい。 勉強の好きな人だったのだろうとおもった。 定年退職をして、東京に戻ってきたそうだ。 東京で、園田さんと会い僕のことを聞いたらしい。 園田さんも大学に勤めており、同じような、研究をしているそうだ。 南野さんは、なんとも言えない雰囲気で園田さんのことを話す。 たぶん、まだ園田さんのことを忘れられないような、そんなかんじがする。 俺は、かーちゃんのことを思い胸がちょっと、痛んだ。 そして、少し意地悪になった。 「ぼくも、少し知っていますよ。あなたと、園田さんのこと。」 南野さんは、少しビックリしていた。 「同級生のお母さんですからね。会ったこともありますよ、  園田は僕より潔癖性ですよ、男女の不埒な関係を嫌悪していますよ。  あなた達は、不倫関係だったんです、知ったらショックでしょう。」 「 園田さんは、その時別居中だった、君のお母さんとはただの同居人のような関係だった、、、、、、、、」 「でも、母は、僕を妊娠していた、その時の母を思うとすごく不安だったと思いますよ。 母は、シングルマザーで苦労して僕を育ててくれました。 あなた達の不倫は、忘れられないロマンスだったかもしれないけど、 それは、僕の母の悲しい涙があったことを思って欲しい。 、、、、、、、、、、」 「、、、、、、、、、、、、、」 「すみません、責めるつもりはなかったのですが、、、、、、、、  つい、すみません、、、、、、、、、、、」 「、、、、、、、、、、、、」 おれは、絶対責めないでおこうと思ったのに、止める事は出来なかった。 俺は、嫌な、気分で帰ってきた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!