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会社に居ても、南野さんのことが気になり、仕事に集中出来なかった。
母を捨て知らなかったとは言え、俺を捨てた人だ、あんな人、構うな放っておけ、と思う一方で。
病院で苦しんでいる姿が、頭から離れず、気になってしかたがなかった。
思い切って一週間有給をとって、南野さんを看病しようと思った。
後悔しないように。やれることをしようと決めた。
南野さんに言うと 「そんなことは、しなくてもいい、仕事に行きなさい」
と言ったが。
「気になって仕方が無いのです、思うようにさせてください。」
とお願いした。
南野さんは痛み止めを、点滴でとっているので、痛みがないらしいが、体の
置き所がないぐらい、気持ち悪いそうだ。
おれは、南野さんの体をマッサージしたり、摩ったりした。
「どーですか? ちょっとは、楽ですか?」
「 ああ‥いいよ、ありがとう。」
ちょっとは、楽になった感じだ。
母は、病院に来ようとは、しなかったけど、朝早く俺の家に来て、体にいいと
言われている漢方薬を煎じて飲ませてあげて欲しいと、持ってきた。
それが、毎日煎じて、持ってくるようになった。
昼間は、妻と娘が来てくれた。
娘は、保育所で覚えた、歌やおどりを披露して、南野さんの笑顔をさそった。
その時、初めて南野さんの笑い顔をみた。
闘病生活で、彼は全然笑わなくなっていた。
一週間、病院に寝泊まりし看病した、その間南野さんは、母と別れてからのことを教えてくれた。
南野さんは、高校を辞めて、高等専門学校に行ったらしい。そこまで僕も聞いていた。
その後、九州の国立大学で教鞭をとっていたらしい。教育学部の先生で社会の
教科書を執筆したらしい。
勉強の好きな人だったのだろうとおもった。
定年退職をして、東京に戻ってきたそうだ。
東京で、園田さんと会い僕のことを聞いたらしい。
園田さんも大学に勤めており、同じような、研究をしているそうだ。
南野さんは、なんとも言えない雰囲気で園田さんのことを話す。
たぶん、まだ園田さんのことを忘れられないような、そんなかんじがする。
俺は、かーちゃんのことを思い胸がちょっと、痛んだ。
そして、少し意地悪になった。
「ぼくも、少し知っていますよ。あなたと、園田さんのこと。」
南野さんは、少しビックリしていた。
「同級生のお母さんですからね。会ったこともありますよ、
園田は僕より潔癖性ですよ、男女の不埒な関係を嫌悪していますよ。
あなた達は、不倫関係だったんです、知ったらショックでしょう。」
「 園田さんは、その時別居中だった、君のお母さんとはただの同居人のような関係だった、、、、、、、、」
「でも、母は、僕を妊娠していた、その時の母を思うとすごく不安だったと思いますよ。
母は、シングルマザーで苦労して僕を育ててくれました。
あなた達の不倫は、忘れられないロマンスだったかもしれないけど、
それは、僕の母の悲しい涙があったことを思って欲しい。
、、、、、、、、、、」
「、、、、、、、、、、、、、」
「すみません、責めるつもりはなかったのですが、、、、、、、、
つい、すみません、、、、、、、、、、、」
「、、、、、、、、、、、、」
おれは、絶対責めないでおこうと思ったのに、止める事は出来なかった。
俺は、嫌な、気分で帰ってきた。
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