第1章: あの声、誰の声

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「へー……、そこそこあんじゃん」  スワイプ、スワイプ。淡々と吟味をするヒカル。  少し見せて欲しい気もするけれど、バイト職人のヒカルに任せておいた方が正解だろう。 「……あ。これなんてどーよ?」  そんなことを思っている間に、早速何かを見つけたようだ。  私だったらこんなに早くはならない。  やっぱり正解だったみたいだ。 「これこれ。司書さん、みたいな?」  司書というと、図書館か。  結構特殊そうな気もするが、そんな業種もネットで募集する時代なのか。 「……大学図書館? っていうか、よく見たらコレ、ウチの大学じゃん」 「あ、マジだ。見出しのところに書いてないから気付かなかった。えー、こんな近場でやれんの?」  募集元の説明文には、明らかに私たちが現在通っている大学の名前が載っている。  大学図書館はそれぞれの学部で管理されているものなどいくつか分散して建っているが、この募集を行っているのはキャンパス中央付近にある中央図書館。  建物の大きさも蔵書の数もずば抜けている。  そんな図書館だった。 「へー、珍し」 「それに、これだったら講義出るついでにできるかも……」 「マジメか。……まぁ、無駄足にはならないし時間も節約できるから、全然悪くないよねこれ」  うん、と頷いて返事。  本に囲まれる時間は何物にも代えがたいものがある。  昔からそうだ。  小学校でも中学校でも高校でも図書委員は経験済みだった。  まさか、大学でもそれが達成できるかもしれないなんて、夢のようだ。
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