天気予報は晴れでした

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 朝、裏庭で僕は、洗濯物を干していた。僕と嫁さんと子供の分だ。嫁さんの肌着類だけ部屋干しだ。  屋内でバサッとやってから、ハンガーで吊るしたのは、すぐに干し終わる。  タオルやハンカチ、肌着などは、外で一つ一つ端を持ち、(しわ)にならないよう、バサッと伸ばす。  肘にスナップを効かせるので、肩や首が疲れる。  やっと洗濯物を干し終わった。  肩回しをして、ストレッチをしている。お隣の裏庭には、財前(ざいぜん)さんの奥さんが、出てきた。  妙齢(みょうれい)の奇麗な方だ。 「財前(ざいぜん)さん、おはようございます」 「おはようございます、テレビの天気予報では雨が振るそうですよ」  つま先立ちになりながら、財前(ざいぜん)さんは、干してあった洗濯物を取り込んでいた。 「――そうなんですか」 「今日は夜勤ですか?」 「いえ、日勤です」 「シフト生で、大変ですね。奥さんが、ご主人のこと『家事を頑張ってくれてる』ってわたしの前で、()めていました。奥さんからすれば、面と向かって言いづらいことかもしれません」  僕は財前(ざいぜん)さんと空をチラ見する。財前(ざいぜん)さんは、背中を向けている。  灰色の雲が急に増えてきた。太陽の観察にも耐える、特殊サングラスを胸ポケットから取り出す。  サングラスをかけた。目測(もくそく)では、上空における雲の比率は、70パーセントくらいだろう。  すぐに下を向く。空からは雨が降る直前のような、水の匂いがする。慌ててサングラスを外した。  お隣の財前(ざいぜん)さんは、洗濯物をプラスチックの大きなかごに入れ終わった。  財前(ざいぜん)さんの裏庭は、軒先が飛び出ている。そこにかけてある、四角い洗濯ハンガーには、目隠しだろう。細かいネットで四方(しほう)を囲まれていた。 「うち乾燥機がないので、コインランドリー持ってきます」
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