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鳴かぬ蛍が・・・。
夕飯を済ませた僕はお盆の上に徳利とお猪口を乗せ、その徳利の中に冷や酒を注ぎ、自室の縁側へと急いでいた。
「ああ・・・飛び出した・・・」
僕はそう声を漏らし、笑んで縁側に落ち着き、暗がりに舞い踊りはじめた蛍の灯りに目を奪われていた。
「綺麗だ・・・」
僕は感慨無量となりそう呟き、徳利からお猪口に冷や酒を注ぎ入れてそれを口にしていた。
口にしたその酒は美味だった。
味も香りも舌触りも申し分ない。
しかし、なぜか味気なかった・・・。
美味なのに・・・味気ない・・・。
その理由を僕は知っている・・・。
もし、あの人が・・・。
そう思うと切なくなった。
そして、僕の身体は卑しく疼きはじめていた・・・。
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