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宮崎先輩
白木利一の携帯に、およそ二年ぶりに、パチンコ屋の先輩宮崎から電話が入った。
「元気か?久しぶり」
「……宮崎さん?」
「そう。元気か?」
宮崎とは何度か数人で呑んだことはあるが、それほど親しい仲じゃない。利一は正直、戸惑った。
宮崎は利一のアパートの前に来ているという。
せっかくの休みに昼間から迷惑だと思ったが、「すぐ帰るから」という宮崎のことばに、利一はテレビを消して表に出た。
アパートの前に路駐した車から宮崎が降りてきて、媚びるような笑顔を見せる。
「悪いな急で。ちょっと車ん中で話せる?」
「あ、はい……」
利一は反射的に警戒した。
というのは、宮崎の口もとが引きつり、妙にきょろきょろと辺りを見回しているからだ。宮崎が醸し出す余裕のなさに、利一は緊張した。
吸うか?と紙巻たばこを勧めながら、宮崎は窓の隙間から煙を吐き出し、「勝負かかってんだ……」とつぶやく。
二年ぶりに急に来られて、芝居じみた口調で勝負かかってるといわれても、意味がわからない。利一は、運転席の宮崎に怪訝な顔を向ける。
宮崎は小声で「誰にも言うなよ……」と、経緯を話しはじめた。
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