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目が覚めると大きな背中が目の前にある。
相変わらず俺に背中を向けた状態で寝息を立てている。
自分より大きな背中におでこを寄せるとシャツ越しにじんわりと正造の温かさが伝わってくる。
その温もりがもっと欲しくて体を密着させた。
シャツから出た腕に触れてみると思っていた温もりとは違いクーラーでよく冷えていた。
それはそれで気持ちがいいものだと正造の腕に絡みつく。
好き勝手に体をまさぐっていると正造が目を覚まし瞼をこすった。
「もう起きたの…?二日酔いはなってない…?」
うつらうつらと言葉を発する正造。
そう言えば昨日は飲んで正造にからんで口でしてもらって…。
そこからの鮮明な記憶がない。
何があったのか正造に聞こうにも「だから無茶な飲み方したらダメだって…」と注意されるだけだった。
少し痛む頭を薬でごまかしながら正造と家を出る。
正造とくだらない話をしながら正門をくぐると待ち伏せしていたのか妹の日和(ひより)が腕に抱きついてくる。
日和とは年子だったため小さいころから遊ぶときは常に一緒だった。
兄ながら日和は整った顔をしていて胸のあたりまで伸びたサラサラの髪は風を受けるたび優しく揺れて綺麗だった。
俺の背中に半身を隠しながら隣にいる正造を見つめる日和。
人見知りの癖に俺の友達とは仲良くなりたいのかよくこうして近づいてくることがあった。
「これ、妹の日和。」
きっかけ作りをしてやるために正造に紹介する。
正造は俺と日和を見比べるようにしながらニコニコと日和に笑いかける。
日和は俺の背中から跳ねるようにして俺の隣に並ぶ。
俺とでも20㎝違うのに背の高い正造と比べると子供と大人ほどの身長差があった。
真上を見上げるような格好で日和が背筋を伸ばす。
「橘 日和です。いつも駿君がお世話になっているようで、ありがとうございます。私とも仲良くしていただけると嬉しいです。」
日和が柔らかく笑うと空気が和んだ気がした。
日和は名前の通りその場にいるだけで周りを温めてくれる。
その魅力に惹かれる者は少なくない。
正造も例にもれず見とれている。
俺は日和を隠すように「妹に手出すなよ」と言ってのけると、正造は意識を取り戻したかのように自己紹介していた。
昨日正造の家に泊まった事から日和の顔を真っ直ぐに見ることができない。
やましいことは多分なかったにしろ正造とはセフレだ。
さすがに妹にセフレだと紹介することはできない。
日和は挨拶をした事で満足したのか足早に自分の教室へと向かって行った。
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