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 「駿君。百瀬先輩ってあんまり良い噂聞いたことないんだけど大丈夫?昨日は百瀬先輩の所泊まったの?変な事されてない?」 昼休みに食堂に呼び出されたかと思えば日和の質問攻めにあう。 日和はブラコン気味なのかこうしてたまに俺の交友関係に口を出してくることがある。 いつもは可愛いヤキモチだと思っていたが正造の事を言われると少しムッとしてしまった。 あいつは見た目こそチャランポランで男女関係も派手だが悪い奴ではない。 どこを褒めるべきなのか分からないが一緒にいて無理をしなくてもいい存在で、俺が素直にぶつかれる大切な友人だと思っている。 何を言っても許してくれるような、受け入れてくれるような優しさに甘えていた。 「あいつは見た目ほど馬鹿じゃないよ。」 なんと言い返すのが正解か分からずに曖昧な言葉でその場を濁す。 日和が何か言い返すのが分かったが目の前をよく見覚えのある顔が通り過ぎて頭に入ってこなかった。 手が急に冷えるのが分かる。 振り向くな。 俺に気が付かずに行ってくれ。 俺はそう心で思いながらもその人から目が離せない。 心臓が大きく鳴っているのが分かる。 日和に腕を引かれても足が動かない。 通り過ぎたはずの後ろ姿が足を止めて振り返る。 ダメだ。 そう思いながらも視線を動かすことができなかった。 玲央…。 目が合って軽く会釈される。 俺は笑って手を上げたつもりだったがどこまで正常に動けていたかは分からない。 ただ、金縛りが解けたかのように日和の手を振りほどき玲央とは反対側へ逃げるように足早に食堂を後にした。  苦しくなるまで走り続け人気の少ない所で腰を下ろす。 久しぶりに見た顔。 一年前より随分背が伸びたか? 小さいの気にしてたもんな。 痺れたように震える手を温めるように握りしめる。 顔が見れた嬉しさと思い出される記憶が頭を占領する。 自分を落ち着けようと深呼吸するが心臓がおさまらない。 おさまりそうになっては顔を思い出しうなだれた。 同じ大学に来ていたことは知っていた。 後ろ姿を見た日もあった。 でもこんなにお互い向き合うのは初めてだった。 大学内では自分がゲイだと隠してはいないし、知る者の中にはゲイバー通いもバレている。 玲央が俺の事をどれほど耳にしているかは分からないが軽蔑されたくはなかった。 恋人が無理だったのならせめて玲央が憧れた記憶の中のままの先輩でいたかった。 今更になって現実が突きつけられて胸が痛むのを感じた。
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