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「橘君って彼女いるの?」
同じ講義を受けている同級生の女子に声をかけられる。
「あぁ、俺ゲイだから。彼女は一生いらないかな。」
俺は混雑している食堂で恥ずかしげもなく言ってみせる。
聞いてきた女子は気まずそうにしながら俺の傍を離れていった。
「駿君!声でかすぎ!周りにも聞こえてるよ。」
一緒にいた鳥居が忠告するように言ってくるが周りに聞こえていても構わなかった。
反対に聞かせたいくらいだった。
俺に無駄な興味を持たないでほしい。
俺の事を知ったうえで近寄ってきてくれた人の方が付き合いやすい。
たまに物珍しさだけで寄ってくる奴も、さほど自分と変わらないと分かると興味をなくして去っていく。
男も女もそんなに変わりはない。
同じように恋をして抱き合い、思いを伝える。
俺も一時はゲイであることが悪い事のように感じて周りに話せなかった。
その概念を壊してくれたのは高校の時に出会った友人の恋人だった。
好きなものは好きと胸を張って、ストレートだった吉平を落とした。
吉平が単純だっただけかもしれないが俺はその姿を見て随分勇気をもらった。
中学から一緒だった吉平にも黙っていたのに太一を見てからは簡単にカミングアウトできた。
吉平も太一を相手にしていたせいか拒絶したり気味悪がったりはしないでくれた。
もともと異性愛者が多い世の中なのだから少数派の同性愛者が異端の目で見られるは仕方ないと思っていた。
全ての人に愛されるのが無理なように、すべての人に理解されようなんて思ってはいけないのだ。
ただ大切な人だけが分かってくれたらそれだけで…。
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