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 水野が家に来た時に邪魔をしたくてわざとリビングで映画を見ようと誘った。 水野は駿君の反応を確かめてから頷いた。 映画のDVDを駿君にセットしてもらっている途中に後ろから駿君の背中に話かける。 「駿君最近水野君と仲良いよね。何度か家に来てるでしょ?」 明らかに答えに困っている駿君。 おもしろくない。 普通の友達だって言えばいいだけじゃないか。 水野にも「仲良いの?」と首をかしげてみる。 水野も挙動不審に曖昧な答えをしてくる。 駿君には感じなかった苛立ちが沸いてくる。 水野の顔をジッと見つめる。 肌が綺麗で女の子みたいに見えなくもないが手の大きさや肩幅から男を感じる。 綺麗な形の唇で駿君とキスをしているんだ。 駿君に触られてその口からイヤラシイ声が漏れちゃうんだ。 「どうかした?」 観察するように見ているとセットを終えた駿君が当たり前のように私と水野の間に座る。 電気を消して映画を再生する。 いつもは駿君に寄りかかって見るテレビも今日は水野がいるからと駿君に止められた。  映画が中盤にもなると盛り上がりを見せてくる。 私は水野がいることも忘れて映画に見入っていた。 喉が渇いてテーブルのグラスに手を伸ばした瞬間に振り返ると駿君と水野は手を繋いでいた。 まるで二人で見ているかのように。 私の存在など忘れてしまったかのように。 それからは映画の内容が頭に入ってこなかった。 こうして画面に目を向けている間も駿君と水野はお互いの体温を感じて触れ合っている。 一日の数時間邪魔した所で何も変わらない。 お互いにお互いを思っている。 私が甘えて手を繋いだところで駿君はなんとも思わないのだろう。 水野と初めて手を繋いだときはどんな気持ちだったの? 水野とするキスは? セックスは? 考えれば考えるほど水野に殺意が沸いた。  映画が終わると二人は当たり前のように駿君の部屋に向かった。 ドアを開けて覗くのはバレる可能性があったのでドアに耳をあてた。 生々しいキスの音。 ワザと音を立ててはお互いの笑い声が漏れてくる。 私は目を瞑って耳に神経を集中させる。 衣擦れの音。 どちらかの息づかい。 既に二人は言葉を交わしてはいなかった。 時折水野のものと思われる声が聞こえてきては鳥肌が立った。 「きもちいい?」 その声だけはハッキリと聞こえた。 聞きなれた駿君の声。 興奮していてイヤラシく確認するかのような声。 それに合わせて水野の声も大きくなる。 私は逃げるようにして、またしても駿君を思って一人でした。
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