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 気持ちが悪い。 男同士でキスやセックスするなんて考えられなかった。 水野のような男がどうして駿君に触れることが許されるのだろう。 あんなに地味で冴えない男が駿君の隣にいていいわけがない。 私は小さい頃から駿君に見合う女になるように努力してきた。 駿君と同じ高校に通うのだって私には簡単な事ではなかった。 昔から可愛らしいと言われてきていたことから、不細工だとは思った事はなかったがどうすればもっと可愛くなれるのかファッション雑誌やネットで調べた。 体重維持も小顔マッサージもネイルだって不器用なのに練習した。 それなのに結局水野?  私があまりにも駿君と結婚すると言い張るので小学生のクラスメイトに兄妹では結婚できないと教えられた。 私は駿君と私を引き裂くための嘘だと思っていたが家に帰ってから母に聞くと本当だと教えてもらった。 その時の私の絶望感なんて水野に分かるはずない。 この世でたった一人。 両親を除いて駿君とは結婚できないのが私だなんて…。 両思いになる事さえも祝福してもらえない関係。 子供を望んではいけない関係。 私は小さい頃からその呪縛を抱えて生きてきていた。 それなのに男同士だなんて反則じゃない? 最近では同性愛も世間に認められ始めているが、まだまだ一般的ではないだろう。 結婚だって簡単にはできない。 子供なんて養子意外望めない。 もし駿君が男しか好きになれない人だとしたら私は兄妹である前から恋愛対象外になってるのかと思うと恐ろしかった。 いつかは私に振り向いてくれると信じていた。 お互いに恋人もできないまま年を取って、いつの間にか一緒に居るのが当たり前になっていて他の人に興味を持てなくなる。 私はそんな小さな可能性にかけていた。 だからと言って諦められるものでもない。 私が長年駿君を思ってきた気持ちは嘘偽りのないものだ。 私は何があっても駿君から離れない。 駿君の目を覚ましてあげなくては…。
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