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待っていても何も変わらないので行動にうつすことにした。
駿君に水野の悪口を吹き込むのは得策ではない。
だから水野に手を出すことにした。
まだ高校生。
それに水野はきっと恋愛経験も浅いのだろう。
駿君の妹として、クラスメイトとして近づいた。
毎日言葉を交わし、まるで水野に興味のあるフリをした。
クラスメイトに水野が好きなのかと聞かれれば否定することなく俯いて見せた。
クラスメイト達は勝手に盛り上がり私と水野をくっつけようとしてきてくれた。
グループ活動があれば同じ班に。
わざと二人きりにされることもあった。
私は内心すぐにでも水野の傍を離れたかった。
簡単な嘘をついて信じ込ませて別れさせたかった。
それができなかったのは少なからず水野が私と同じように駿君を大切に思っているのが伝わってきたからだった。
もし私の嘘を信じることなく駿君を信じたのなら私は駿君に軽蔑される。
家族でいることもできなくなるかもしれない。
だから時間をかけた。
駿君に向いているはずの気持ちが私にダブるように…。
元々顔のつくりは似ている。
後は駿君の癖をまねて見たり、不自然なほど近寄って見たり、駿君と同じ香水をつけてみたりしてみた。
さすがに胸を寄せた時には鳥肌が立った。
好きでもない相手に触れられるのがこんなにも気持ちが悪いものだと初めて知った。
だが水野が私を意識しているのは分かっていた。
受験勉強でなかなか会えない駿君を私の中に見出しているのだろう。
ダメ押しで告白までした。
もし付き合うことになったとしても何かと理由をつけて別れればいい。
ただ駿君と水野を別れさせることができるのなら何でもよかった。
水野のくせに答えは保留にされた。
私は必死にしがみつくように健気な女を演じた。
クラスのムードも私を応援するようなものになっていた。
私は思った通りに事が運んでいくのが面白くて笑いをこらえるのに必死だった。
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